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人類の始まりからして男尊女卑な創世記
はじめにの中で書いたように、
「既存の宗教に出てくる神仏といったものは初めから存在しないという前提」で聖書を読んでみると、
特に創世記などはどう考えても荒唐無稽なお話でしかない。
もちろん、神に従わせる理由付けとしておそらく
「神がこの世の全てを創造しました」以上の論理はないのだろうが、
ではどのように天地が創造されたかというストーリーが必要となって書かれたのが創世記である、と考えざるを得ない。
さて、神は天地を創造し、動物と植物を創造し、それらを良いとされた。
次にアダムを創造し、しばらくしてからイブを創造された。
(注:JW的には「エバ」の表記が新世界訳聖書で用いられていますが、本ブログでは日本において一般的な「イブ」で統一します)
ここで、現代に生きる文明国人であれば誰しも疑問に思うことがある。
なぜ男女を同時に創造せず、先に男だけを造り、まるでついでかのように女を造ったのか?
少なくとも動物については雌雄同時に造っていると考えられるにも関わらず、である。
子孫繁栄の仕組みから言っても、
先に女を造って何人か子どもを産ませて栄えていけばよさそうなものだ。
だいたい男のアバラから女ができて、その2人で子どもを産むだなんて、まるで自己増殖である。
総合的に見て、日本神話のイザナギ・イザナミによる国生みの神話と同じくらい荒唐無稽なのだが、
エホバの証人によれば創世記は真実の物語である。
聖書が書かれた時代背景を考えると、
イブが後から造られた理由について辻褄が合う答えは、おそらくこうだ。
古代のイスラエル社会は、極端に男性優位の社会だったから。
女は男の「所有物」だったのだ。
同時に創造されたとしてしまうと対等だという論理が成立しかねないため、
このような記述になったと考えるのが最も自然だろう。
木の実を食べてしまったのは、予定調和の出来事
さて、その後アダムとイブは善悪の知識の木の実に手を出し、エデンの園を追放される。
2つ目の疑問がわく。
なぜそんな危険な木がエデンの園に植えられていたのか?
難しく考える必要はない。答えは、食べさせるためだ。
考えてみてほしい。
創世記が書かれた当時、既に人間は老いと病に苦しみ、死すべき存在だった。
でも神がせっかく人間を造ったのに、
人間が苦しんでばかりでは神を崇める理由の半分以上が失われると思っても無理はない。
というか、はっきり言ってそんな神は神として実力不足である。
だからエデンの園になくても良い不自然な木を植え、
これを食べさせ、追放されるというのは必要なストーリーだったのだ。
あくまでも神のせいではなく、
人間の自業自得で病と老いと死があるという結論ありきのお話である。
「悪魔」は必要だから存在する
ここで最も重要なキャラが登場する。
悪魔である。
いわゆるサタンであるが、彼の存在意義もまたよく疑問視される。
反逆したならその場で処刑してしまえば?とか、
アダムとイブもまとめて殺してもう一度人間を造れば良かったじゃないか?とか、
そもそも神と悪魔の戦争になんで人間が巻き込まれないといけないの?とか、
一度は考えたことがあるだろう。
悪魔サタンの存在意義は即ち、人間のイメージした神という理想と、
人間世界という現実のギャップを埋めるために必要だ、ということである。
また、後の時代においても悪魔の存在は非常に重要だ。
なにしろ、彼がいなければ宗教というもの自体が不要になってしまう。
JWのイメージする楽園というのは、
最終的に悪魔もいなければ背教者も未信者もおらず、
神の存在だけは厳然たる事実だという世界である。
そうなってしまえばエホバの証人は「証人」として「証言」をする必要がなくなるため、
「エホバの証人」を名乗れなくなる。
正確に言えば、名乗っても意味がなくなる。
キリスト教が成立しているのは、ひとえに悪魔のおかげである。
全てのキリスト教徒は、彼に感謝しなければならないのではないだろうか。
神話が作られる理由
冗談はさておき、
この悪魔がいつまでものさばっていると神のメンツ丸つぶれなので、
いつになるかはわからないが最後の審判が行われる前に悪魔は滅ぼされることになっており、
この終末思想を中心的な教義として用いているのがエホバの証人であることは周知の事実である。
後々モーセ・ヨシュアの項でも書くが、
イスラエル人は自分たちの手に入れた土地を、
この絶対的な主権者である神から与えられたものとすることで民族の歴史を神聖なる歴史とした。
勝者によって造られた歴史が正当な歴史とされたり、
ある集団が自分たちの正当性を荒唐無稽なストーリーでもって語ったりするのは世の中の常である。
日本では、日本列島を生んだ神(イザナギ)の子である天照大御神の子孫が地上に降り立ち(天孫降臨)、
さらにその子孫が武力でもって日本全土に支配を広げてゆき、
そのまた子孫が今の朝廷(天皇家)である、
という神話によって大和朝廷の正当性を裏付けた。
似たようなものである。