カインとアベル

古代ユダヤから読み解くエホバの証人

旧約聖書創世記の神話(2) カインとアベル

アベルはユダヤ人の象徴

次に、カインとアベルの話である。

こちらも実はよく読んでみると、意味のわからない部分が多い話だ。

カインは農作物を、アベルは子羊を犠牲として神に捧げていた。
ところが神はアベルの捧げ物のほうにだけ好意を示した。

そもそもここからして意味がわからないのだが、
その後あろうことかカインはアベルを野原に誘い出し、殺してしまう。

何も殺す必要まであったのだろうか。

結局のところ、これも古代ユダヤ人の自己正当化の物語であると解釈すると、辻褄が合う。

当時のユダヤ民族は遊牧民であり、その生活を支える羊が最も大切な財産であったため、
犠牲として捧げるのに最も良いのは、羊だった。

そして敵であるエジプト人はナイル川の水を用い、農業をして生活していた。

つまり、自分たち遊牧民は善人で、
エジプト人のような農耕民は悪人であると印象づけたいがためのストーリーなのである。

カインが疎まれる矛盾

だいたい、カインは人間の二代目だ。

そんな時代にユダヤの民は遊牧民ではなかったし、当然ながらまだ「ユダヤ」ですらない。
羊が最も大事だという習慣のない時代に、どうして羊のほうを喜ぶことがあるのか。

JWでは「心の中を見た」という説明がされる。

幼少期からの元2世なら思い出深いであろう、「聖書物語」によれば、
以下のような記述となっている。

アベルの供え物がカインの供え物よりも良い,というだけではありません。アベルが良い人だからです。アベルはエホバと自分の兄弟を愛しています。でもカインは悪い人で,自分の兄弟を愛していません。

実際の聖書ではここまではっきり書いておらず、
そうであることをほのめかす記述であり、
特に下線部分についてはそんなことは一切書いていない。

とにかくカインは悪人でアベルは善人だ、
というのは特に明確な根拠が示されずに決まってしまっている。

カインは植物を捧げたが、アベルは生き物を殺している。
動物の命が奪われるほうを神は好むというのだろうか。
農耕民もアダムの子孫であるが、彼らは何を捧げれば良いのか。

聖書の記述から合理的な答えを見出すことは困難である。

アダムとイブ(エバ)旧約聖書創世記の神話(1) アダムとイブ(エバ)前のページ

旧約聖書における預言者と、現代の新宗教次のページ旧約聖書における預言者と、現代の新宗教

関連記事

  1. 統一イスラエル王国時代とその分裂

    古代ユダヤから読み解くエホバの証人

    古代イスラエル(2) 統一イスラエル王国時代とその分裂

    短かったイスラエルの最盛期ようやく周辺の異民族を排除し、…

  2. バベルの塔

    古代ユダヤから読み解くエホバの証人

    旧約聖書創世記の神話(4) バベルの塔

    異教徒を批判するための寓話これまで見てきたように、創世記の…

  3. ヨシュア・裁き人の時代

    古代ユダヤから読み解くエホバの証人

    古代イスラエル(1) 戦乱のヨシュア・裁き人の時代

    ヨシュアによるカナン征服の「成功」とにもかくにも、カナンの…

  4. 出エジプトの史実性に関する研究

    古代ユダヤから読み解くエホバの証人

    旧約聖書出エジプト記(5) 出エジプトの史実性に関する研究

    「出エジプト」も全て神話だった可能性が高いさて、ここまで4…

  5. エジプトからカナンへ(2) モーセの実在性

    古代ユダヤから読み解くエホバの証人

    旧約聖書出エジプト記(3) モーセの実在性と「エホバ」誕生

    モーセという人物の果たす役割以上、ヤコブからモーセ、ヨシュ…

  6. アダムとイブ(エバ)

    古代ユダヤから読み解くエホバの証人

    旧約聖書創世記の神話(1) アダムとイブ(エバ)

    ※このカテゴリーはシリーズ記事になっています。目次をご覧ください。…

Recently

  1. 出エジプトの史実性に関する研究
  2. 1世紀におけるクリスチャン会衆の現実
  3. 承認欲求の塊どもに告ぐ!
  4. 元エホバの証人コミュニティの罠(6) 現役親編
  5. ノアの箱舟

Pick Up

  1. ものみの塔の宗教法人法違反疑惑 考察
  2. 元エホバの証人コミュニティの罠(5) 毒親編
  3. エホバの証人2世の作られ方 -哲学的ゾンビ-
  4. エホバの証人2世と1世 -行動原理の比較-
  5. 元エホバの証人コミュニティの罠まとめ(1) 現状認識
PAGE TOP