元エホバの証人コミュニティの罠(5) 毒親編

社会問題としてのエホバの証人

元エホバの証人コミュニティの罠(5) 毒親編

不可分関係にある「毒親」と「1世親」

では、元エホバの証人コミュニティに存在する、
「エホバの証人問題の解決」に向けて苦しむ人々にとっては、
具体的にどのような罠が潜んでいるだろうか。

前回の記事でも指摘したとおり、
個々人のエホバの証人問題解決に向けては、
それぞれの抱える家庭環境や人間関係など、
個別に考えなければならない部分が確実に存在する。

その中でも主に元2世が抱える問題の中で、
エホバの証人問題と重なって論じられることの多いのが、
いわゆる「毒親」の問題である。

これ自体が最近の流行り言葉であるためカギカッコ付きで表記することとするが、
一般社会で近年急激に脚光を浴びている「毒親」の問題と、
エホバの証人2世が直面する1世親の問題というのがかなりリンクする例が多い。

これについては「エホバの証人2世と1世 -行動原理の比較-」にて説明したとおり、
1世親が本質的に子どもの福祉を考えず、
ものみの塔の教義に沿って子どもを教育することのほうを優先して考えてしまうところに原因がある。

つまり、子どものためを考えるのではなく、
自己満足のほうを優先する親というのが「JW毒親」の基本的な特徴だ。

エホバの証人家庭では、
子どもがものみの塔の基準に従って生活をするという「条件」を満たした場合にのみ
「愛情」を与える(条件付きの愛情)という形で親子関係の不和が生じることがしばしばあるわけだが、

それ以外にもきょうだい間の扱いの差別であるとか、
本来親がやるべき仕事を子どもに押し付けるであるとか、

親の意見は絶対であり子どもは全面的に従わされるであるとか、
究極的には虐待を行うとか、一般的な意味での「毒親」の程度はそれこそ家庭によって全く違う。

これらは「ものみの塔の基準に従うことを条件とする」という部分以外は
一般社会でも多く見られる親子関係であり、
だからこそ今「毒親」という造語ができ、
社会全体で問題が共有されつつあるわけだ。

1世親の問題を考える場合、
この一般に言う「毒親」に当てはまるか否かは非常に難しい問題だ。

「エホバの証人に関係なく、元から毒親」、
「元から毒親だが、エホバの証人になったことでさらに深刻化した毒親」、
「エホバの証人になったせいで毒親化した1世親」
がいるのは周知のとおりだが、

一方では
「エホバの証人になったおかげで毒親にならずに済んだ」、
「エホバの証人に関係なく毒親ではない」
という人が存在するのもまた事実だろう。

1世毒親との関係を改善するためには、
「ただの毒親」なのか「エホバの証人であるがゆえの毒親」なのかを分けて考える必要があるが、

同時に「エホバの証人になったせいでただの毒親的な行動も取るようになった」パターンも考えると、
完全にこれらを切り離して考えることはできない。

とても複雑な問題だと言える。

「毒親」問題を自ら深刻化させる

ところが現状としては、
この不可分関係を逆手に取った問題の捉え違いや不要な深刻化が起きているように思われる。

元エホバの証人コミュニティにおいて毒親問題が引き起こすデメリットとしては、大きく分けて二つある。

「”エホバの証人の1世親は例外なく毒親である”という価値観の流布、押し付け」
というものと、

「毒親エピソードによる影響で自分の親を毒親認定し、親子間コミュニケーションを自ら断絶してしまうこと」
というものだ。

まず前者については、
元エホバの証人どうしの傷の舐め合い、依存という問題とも密接に関わるし、
排斥処分に伴う忌避という問題とも切っても切れない関係にあるが、

要は親がエホバの証人であることで被った不利益を全てものみの塔のせいにし、
だからエホバの証人の親を持った人々(2世)は全員不幸なんだ、
という極端な価値観に至っている場合があるのではないか、ということだ。

当然、ものみの塔の教義が1世親にもたらした影響と、
鞭問題をはじめとした元2世問題についてものみの塔が糾弾されるべきであることは事実だが、

一般社会において毒親問題はほぼ「親の責任」として語られるのに対して、
元エホバの証人の間では「ものみの塔の責任」として語られることが往々にしてある。

冷静に考えれば現役だろうが元だろうが、
親が信者で子どもが離れていようが、
親子関係に深刻な問題を来していない家庭というのはいくらでも存在するはずなのだが、

1世親が毒親化した責任を親自身に求めることを一切せずに、
矛先をものみの塔(によるマインド・コントロール)にのみ向ける

そしてその価値観を共有できる仲間をネット上で探し求め、
自らの慰めとする(「(1)新参者編」参照)。

こういう状態に陥ると、やはりエホバの証人問題の解決からは遠のいてしまう。

これが後者の問題にもそのままつながるわけだが、
自分で思い込むにしろ、他人に思い込まされるにしろ、
本当は親子関係の改善が可能なのにも関わらず
「毒親」認定のせいでその努力を子どもの側から放棄もしくは拒否してしまっている可能性がある。

もちろん、現役である親の態度が強硬で話にならない、
あるいは排斥によって忌避されていて現状では回復の見込みがないなど、
明らかに親子関係の改善が難しい例は多数存在する。

しかしそうした例を見て自分の親にその姿を投影し、
現実よりも相当酷く自分の親を捉え直してしまうという可能性を頭に入れておくべきだ。

というのは、一般社会における「毒親」ブームも全く同じ側面があると感じるからだ。

それまでは「うちの親はちょっとおかしい」くらいにしか思っておらず、
歪ではありながらもそれなりに親子関係を維持していたのが、

「毒親」という言葉の登場とその定義づけに思い当たる節があると思ったが最後、
自分の親は「毒親」だったんだ!と、いわば「開眼」してしまう人が日本中に続出した。

人間は割と容易に自分の記憶を書き換えることができてしまう。

結果として、今まで親にされてきたことは記憶の中でより極悪非道なものとされ、
自分の親に「毒親」のレッテルを貼り、
親が新たに何かをしたわけでもないのに今度は自分から親を忌避する、といった行動に出る。

こうして、何もなければ悪化させずに済んだ親子関係を余計にこじらせてしまう。

どこからどう見ても「毒親」なエホバの証人家庭ももちろんあるが、
多くの1世親は本物の「毒親」というよりは、

生来持っていた真面目さでものみの塔の教義に従ってしまったことにより
「毒親」的な行動を取るようになっていった例が多いものと思われる。

結果として鞭という身体的虐待、
ハルマゲドンやサタン、エホバの恐怖による精神的虐待を行うことになってしまったとしても、
その大元の動機として1世親の多くが真剣に子どものためを考えた末の行動であったことまでも否定するのは酷というものだろう。

エホバの証人をやめた元1世親の中には、
子どもに対してなんという酷いことをしてしまったのかと真剣に悔やんでいる方も多くいるのがその証拠だ。

元エホバの証人コミュニティでは、
こうした「毒親」要素と1世親の要素が結びついて語られることが多いため、
元2世からすると余計に「うちもそうだった」となりやすい。

今まで気づいていなかった傷を自ら発見し、さらに広げるようなことになりかねないのだ。

良い方向、悪い方向どちらへ活かすか

しかし、やはりこれもメリットと表裏一体だ。

自分の親の何がそれほど問題なのか、
他者の事例と見比べることで今まで見えていなかった問題が顕在化し、
原因を正しく見極めることができれば、対策を打つなり
解決へ向けて努力するなりといったことが可能になる。

そのように、得た情報を良い方向へ向かうための糧とするのか、
被害者意識ばかりを増長させて自ら状況を悪くしてしまうのか

ここにもエホバの証人問題の解決へ向けて大きな分かれ道が潜んでいる。

もちろん、どうしても上手くやっていきようのない関係も、
親の側からの忌避によって接触することすらかなわない家庭もたくさん存在する。

しかしもしそういう状況ではないとしたら、
親と良い距離感を保つには…、
今よりわずかでも親との関係を良くするには…、

それらを考える余地を少しでも持てるかもしれない。

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