ものみの塔の貸金業法違反疑惑 考察

社会問題としてのエホバの証人

ものみの塔の貸金業法違反疑惑 考察

ものみの塔の貸金業法違反の可能性

以上見てきたとおり、現状のものみの塔に何らかの刑事責任を問おうとするのは非常に難しい相談だ。

宗教法人法違反に関しては仮に何かが認められたとしても、
ものみの塔側のダメージ、現役エホバの証人に与える影響、社会的な訴求力、
どれを取ってもほぼ皆無であろうことを考えると、考慮するだけ無駄というものだろう。

宗教資金に関する別の問題として、
貸金業法違反の疑いというものが取り上げられたことがあったが、
これも実質的に立件は不可能だろうと思われる。

現在は王国会館建設に伴う各会衆からの資金収奪スキームが変化してしまったため、
余計に貸金業法違反を問うのは困難な状況になっていると思われるが、
そもそもにおいて個人的な貸付と闇金融の境目というのは非常に曖昧である。

確かにものみの塔のしていた、
王国会館建設に伴う資金貸付は「貸金業」の定義には当てはまると解釈することができる。

・「貸金業」とは、「貸付け」を「業として」行うものを言う。
・「貸付け」とは「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介」のことである。
・「業として」行うとは、繰り返し且つ継続して行う意思を持って「貸付け」を行うことを意味し、「繰り返し且つ継続して」いれば、利益を得ることを目的としない場合や、「貸付け」の相手方が不特定多数でない場合でも、「業」であるとみなされる。

以上の定義からすれば、

無利子であり、特定の条件に当てはまる
(つまり、ものみの塔聖書冊子協会の指揮命令系統下にあるエホバの証人の各会衆)
相手にのみ貸していても、
それは業としてみなされると解釈することは可能だ。

しかし、一つには被害者がいないこと
この場合は貸し付けられた側であるエホバの証人の○○会衆が声をあげないことを理由に
そもそも捜査がなされない(既に指摘されていることだが)。

まあ、考えてみれば当然の話ではある。

もう一つは、これを摘発することで誰のどのような法益が保護されるのか
つまり摘発によって誰が得をするのかという、
法律論云々から少し離れた、現実的な部分の問題もある。

つまりグレーゾーンではあるものの、
貸す側と借りる側には強固な関係があり、

それが宗教団体という公権力が介入しづらい集団であり、
違法な金利でもなければ違法な取り立てがなされているわけでもなく、
一般社会にとりたてて迷惑がかかっているわけでもない。

そのような状況において警察や検察がこれを積極的に摘発・訴追しに行くだろうか、ということだ。

法律の運用現場においては、
より悪いヤツから順に捕まえていくのは当然の話であるし、

法律というもののそもそもの存在意義を考えれば、
単に適法か違法かを杓子定規に判断するだけでなく、
ある程度実情に合った解釈をするのも当然で、そこには必ず人の判断が入る。

おそらく、日本が平和になりすぎて警察があまりにも暇になってしまった場合か、
宗教団体に対して何らかの”見せしめ”的な措置が必要だという社会情勢になった場合、

あるいは何らかの理由で検察がものみの塔を訴追することに
異常な情熱を燃やした場合陸山会事件などのように)は、
可能性が出てくるのではないだろうか。

貸金業法違反は刑事罰があり、罰則も大きい。
もし訴追だけでもなされるようなことがあれば、反エホバの証人たちは大喜びだろう。

しかしその場合でも、外部から見れば所詮は宗教団体内で資金が巡っていただけの話である。

一般人でもそれほど義憤に燃える人がいるとは思えず、
さして話題にもならないだろうことは想像がつく。

グレーな組織「ものみの塔」

とは言え、法的な責任を免れたとしても、
宗教団体としての倫理的な問題への謗りは免れないだろう。

しかしこれも外部から眺めてみると、
宗教団体なんてみんなカネに汚いものだ、
という先入観を持って見るとものみの塔のしていることなんて可愛いものだし、

ものみの塔がその教義で標榜する清さと、
社会的な倫理面での清さが吊り合わないものであることはある程度この組織について詳しく知らなければわからない。

正直そんなことは世間的には「どうでもいいこと」で、
この点で世間の耳目を集めようというのはどだい無理な相談と言えるのではないだろうか。

これまで見てきたとおり、ものみの塔が様々な面で信者や社会に対して不誠実であり、
宗教団体であることを隠れ蓑にグレーゾーンを侵しているということは多くの点で指摘がなされてきたことだ。

しかし刑事責任についてはほとんど問うことが難しいばかりか、
わずかながら問えそうな側面が見つかったとしても、

それは組織の崩壊や世間的な評判の失墜にまで全くつながりそうもないという点で
多くの元エホバの証人たちの溜飲を下げるものにはなり得ないという重大な欠点がある。

(※)2019年9月の記事移設に際し、一部加筆修正しました。

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