エジプトからカナンへ(1) 歴史の真実

古代ユダヤから読み解くエホバの証人

旧約聖書出エジプト記(2) 荒野放浪とエリコ陥落の史実

どう考えても無理のある荒野放浪

さて、神の力か自然の悪戯か、どのような力によるものか定かではないものの、
とにかく機に乗じて出エジプトを果たしたモーセ一行は、カナンの地を目指すこととなる。

しかし、出エジプト記を読んだ方ならよくご存知のとおり、
カナンに入るまでになんと40年もの歳月を要することとなる。

この荒野をさまよった末にカナンに入るまでの物語を見直すと、
古代イスラエルとモーセに関する真実が垣間見えてくる。

エジプトからカナンまで40年。
これはやはりおかしい。

エジプトからカナン(現在のパレスチナ付近)までは直線距離にして約300km。
実際の道のりにしても、まっすぐ向かえばおよそ500kmといったところだろう。

ちょうど東京-大阪間を歩き通すくらいのイメージだ。
500kmと言えば、健脚の男性ならば約2週間もあれば歩き通せる距離である。

その昔、江戸日本橋から京都三条大橋までを移動するには
「東海道五十三次」として知られるルートが一般的だったが、
この距離は492km。

当時の男性は平均13~15日間かけて移動したそうだ。

江戸時代後期の戯作者、十返舎一九による「東海道中膝栗毛」では、
主人公の弥次さんと喜多さん(注)が江戸を経ち、現在の三重県四日市市に到達するまで12日、

その後伊勢へ寄り、奈良を経由して京へ向かっているが、
あれだけ遊びながら愉快に歩いて行っても20日間はかかっていないものと思われる。

女性はプラス4~5日が必要と言われているものの、
それでもどんなに長くても1か月以内には絶対にたどり着く距離であるということは断定して良い。

実際にイスラエル人が移動したとされるルートを辿ってみても、
シナイ半島をぐるっとまわって約1500kmといったところである。

この距離を移動するにしても、3か月あれば十分という結論になる。

それを踏まえてイスラエルのカナンを目指す旅を振り返ると、
これが実にメチャクチャとしか言いようがない行動・出来事のオンパレードなのだ。

まず、地中海沿岸の湖もしくはスエズ湾を渡ったら東へ進路を取るべきだが、
南へ向かっているということ。

そのあたりをウロウロしていれば確実に隊商(キャラバン)などと巡り合うはずであり、
たとえカナンの方向を知らなかったとしても彼らに聞けば即答でわかるはずなのだ。

ところが実際には例の理不尽な「神」が出てきて、
いらぬ道案内をしたおかげでイスラエル人は1か月どころか、
数十年も流浪の生活を強いられることになったのだ。

数々の劇的な奇跡を起こして積極的にエジプトを連れ出したはずの民に対し、
いつまで経っても正しい方向へ向かわせようとしなかったのである。

これでは普通に考えれば、モーセに不満が集まっても全く不思議ではない。

最終的にモーセ自身はカナンの地へ入ることなく生涯を終えることとなる。
実際にカナンへ入ったときはモーセの後継者であり、
冷酷な軍師として知られるヨシュアがイスラエルの民を率いていた。

考古学的に見る「エリコの陥落」の真実

カナンへ入るに際して特筆すべきエピソードは、やはりエリコの陥落だろう。

エリコは、死海に注ぐヨルダン川河口から北西約15kmにあり、
現在でもパレスチナ自治区内に存在する世界最古の街である。

海抜マイナス250mという、世界で最も標高の低い街としても知られる。

ヨシュアはこのエリコの街を占領しようとしたが、
エリコの人々は城門を堅く閉ざし出入りを拒んだ。

しかし、神の言葉に従ってイスラエルの民が契約の箱を担いで7日間城壁の周りをまわり、
角笛を吹くと、その巨大なエリコの城壁が崩れた、とされる。

さて、これを出エジプトのときと同様、科学的に解釈するとどのようなことがわかるか。

エリコのあたりは世界地図を見れば一目瞭然、
アフリカ大陸とユーラシア大陸の境目付近であり、
ここには死海断層という大きな断層がある。

断層と言えば地震。
これは日本で暮らしていれば基本的な知識として持っていることだろう。
地震そのもののパワーに比べて被害が大きくなるのが特徴だ。

となれば、エリコはこの死海断層によって引き起こされた地震によって崩れたと解釈するのが妥当だろう。

地震学者の調査によれば、
西暦前1200年ごろにヨルダン川上流で大きな地すべりがあったことがわかっている。

この影響で一時的に川がせきとめられたことは間違いないとされており、
これによってヨシュアらが預言により流れの止まった川の底を歩いて渡ったとする記述も説明がつく。

また別の見解によれば、エリコはヨシュアが攻めたときには既に滅んで無人になっていたという説もある。
ここで一気にヨシュアの軍事的な才能が発揮され、
イスラエルは次々に街を滅ぼしていき、ついにカナン入りを果たした。

この地震に関しても出エジプトのときの火山噴火と同様、
それこそが神の奇跡だとすることもできよう。

しかし考えてみて欲しい。
本に書かれているからこそサラッと読み流せてしまうかもしれないが、
ヤコブ一家の引っ越しからエジプトを出るまで430年、エジプトを出てからカナンへ入るまで40年である。

神の導きでそうなった、というよりは、
たまたま生じた天変地異に乗じてイスラエル人が行動を起こした、
と解釈するほうが妥当ではないだろうか。

神に導かれていると言いながらその実、あてどもなく荒野を彷徨う姿はまるで、
神に導かれていると言いながら不出来な指導者によって迷走を極めている現代のエホバの証人のようではないか。

彼らの目指す約束の地は、いったいどこにあるのだろうか。

(注)現代ではこの事実がなんとなく覆い隠されているためあまり知られていないが、彼らは単なる愉快なオトモダチではなく、一種の同性愛関係にあったので、JW的にはアウトだろう。詳しくは江戸時代における「陰間(かげま)」という文化を参照されたい。

(※)2019年9月の記事移設に際し、改題しました。

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