エローヒーム信仰と「エホバ」の起源

古代ユダヤから読み解くエホバの証人

古代イスラエル(3) 北王国のエローヒーム信仰と「エホバ」の起源

“北イスラエル王国の信仰堕落”は本当か

統一イスラエル王国が分裂した際、
エフライム族を中心として計11部族の住む北イスラエル王国と、
ユダ族を中心として計8部族の住む南ユダ王国が建った。

そして北イスラエル王国はすぐに信仰が堕落したため滅ぼされ、
南ユダ王国が正統として残り、今のユダヤ人の先祖となった、
と聖書では述べられ、一般にもそう信じられている。

しかし、歴史上わかっている事実を調べると、
これも単に“勝者によって書かれた歴史”に過ぎないことが浮かび上がってくる。

まず当ブログでの中核部分の一つとなっている「神の介在」の否定に関してだが、
北イスラエル王国が滅びたのは信仰が堕落したからだとする聖書の記述には、
学問的に明確な反論が可能である。

北イスラエル王国では首都サマリアをはじめ、
各都市に金の子牛像を置いてこれを拝んでいた。

これが偶像崇拝だとされているわけだが、
エホバの証人もしばしば勘違いしているように、
彼らは決してエホバ(ヤハウェ)を拝むのをやめて金の子牛を拝んでいたわけではない

金の子牛像とは、その上に立つ見えない神を拝むための象徴であり
(それを偶像と言うのだという見解もあろうが)、

台座としての役割でしかなく、
たとえば仏像などのようにそれ自体が神像であるものとは概念的に異なるものであったのだ。

彼らの拝む神は基本的にヤハウェと同じ神であり、
「神の名をみだりに唱えるなかれ」という律法を守って
「ヤハウェ(エホバ)」ではなく「エローヒーム」と呼んでいた。

エローヒームとは、普通名詞で「神」という意味である。

南ユダ王国における”エホバ”とは

では、対して正統であるとされる南ユダ王国が正しくヤハウェ信仰をしていたかというと、
学問的には当時のイスラエル民族の行うヤハウェ信仰は現在の厳密な一神教とは異なり、
むしろ多神教の一種だったという説が支配的である。

当時のイスラエルの神とはつまり、多数いる神々の王(最高神)であり、
それは北イスラエル王国のエローヒーム信仰も同様であった。

北のエローヒームはどちらかと言えば抽象的な存在だったのに対し、
南のヤハウェは具体的な人格を持つ擬人的な神であったところが大きな違いである。

この南ユダ王国のヤハウェ像が、現在のものみの塔が描くエホバ像に非常に近いものと思われる。

それはもちろん南ユダ王国系統によって書かれた旧約聖書に、
ヤハウェがそのように表現されているからなのだが、

そもそもヤハウェというのは元々アラビア北西部の地方神にすぎなかったものが
ミディアン人を通じてもたらされたもの、とも言われる。

エローヒーム信仰のほうがヤハウェ信仰よりも歴史が古いとされており、
それが真実であれば現在の「エホバ」像はまさにこの時期に作り上げられたものと言えるだろう。

他にもヤハウェの起源に関しては、
・もとは暴風の神だったという説(創世記冒頭の「風」ともつながりがある?)
・雷の神であるとする説
・シナイ山の火山神であるとする説
・バアルと同じであるとする説
など様々な説がある。

よって、旧約聖書に書かれている
「元々イスラエル人の信仰していた唯一神から離れていった部族が滅びた」
という説明とは全く逆に、

「別々の由来を持つ二つの神が次第に同一視されるようになった」
というのが歴史的に見た実態に近いと言えるのだ。

信仰と事実のギャップが拡大し続けるエホバの証人

まさか「エホバ」がどことも知れぬ異教の神に由来していたなどとは、
エホバの証人にとってはもっとも受け入れがたい説の一つだろう。

しかし、古代世界にはイスラエル人しかいなかったわけではない。

旧約聖書に出てくる諸民族にもそれぞれ歴史があり、
その文化を調査すれば自ずとイスラエルの実態もそれなりには見えてくる。

そこにイスラエル人の信仰する絶対的な唯一神の姿が見えないのであれば、
どうして旧約聖書だけが間違いのない真実だと言いきれるのだろうか。

考古学的な調査が進む現代において、
エホバの証人をはじめ旧約聖書を信仰する人々はその点を考え直すべき時期にきているのではないだろうか。

(※)2019年9月の記事移設に際し、改題しました。

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