ものみの塔信者vs.非信者 離婚裁判の意義

社会問題としてのエホバの証人

ものみの塔信者vs.非信者 離婚裁判の意義

司法が異常と見なす、ものみの塔の教え

エホバの証人の教えが非常に特殊で、
信者ではない夫にとっては受け入れがたいものであり、

子どもに対してエホバの証人の教育を施すことも受け入れがたいため、
信者である妻に対する離婚請求は認められる傾向が強い。

また、離婚までは認められなくても夫の主張は認められることがほとんどである。

親権について争いがある場合、
エホバの証人の教育を子どもに施すことは一般的に見て異常とみなされることから、
夫の側にいくことが多い。

長年に渡りこの種の訴訟が起こされ続けてきた結果としての典型的な判例としてさらにもう一つ挙げておくと、
まず夫婦間で離婚請求と親権の主張に関して争われた裁判があり、
離婚は認められ、親権は夫にあるとして確定し、
その後さらに夫が妻に対して慰謝料請求の訴訟を起こした、というものがある。

ここで夫側は、離婚の原因はエホバの証人である妻が、
社会的常識を逸脱した教育や生活を子供たちに強要し、
鞭による虐待をし続けたことなどにあると主張して慰謝料を請求したのだが、

裁判所は夫のこの言い分を認め、さらにエホバの証人の信仰に問題があることも認めている
ちなみに判決自体は、慰謝料20万円というものだった。
(東京高裁平成16年2月26日判決)

単純ではない離婚問題×信仰問題

ここで一つ重要なのは、信仰の問題以外にも夫婦関係を破綻させる原因、
親権を取れない原因というものはいろいろあり、

エホバの証人の教えに問題があることを裁判所が認めているからと言って、
非信者の側に必ず有利な判決が出るとは限らないということだ。

逆に言うと、
これだけの判例がありながら親権を取れない(取ろうとしないのとは別)というのは、
非信者の側にも問題があることを示唆していると言える。

信仰と親権の問題に関連させてもっと細分化していくと、
例えば「夫は暴力を振るう(けれども自分はものみの塔の教えに従っているので良い妻だ/だから親権は自分に認められるべきだ)」という主張を妻の側が行った場合、

その因果関係が

夫は元々暴力を振るう人で、そのせいで妻はエホバの証人に拠り所を求めた
妻がエホバの証人になったのに反対して、暴力を振るうようになった

のどちらなのかでは判決に大きく影響が出てくるのは自明の理だろう。

前者ではまず親権は取れないだろうし、
もし後者であり、今まで子ども相手に暴力を振るったことはないということが認められれば親権を取れるかもしれない。

しかし、パターンが後者だったとしても、
陥ったのが暴力ではなくたとえばアルコール中毒であれば、
原因は妻にあると認められて離婚できても、
子どもの福祉を考えると親権は取れないと判断される可能性がある。

要はこのような個別的な要素を無視し、
判決だけを見て「エホバだわ」「サタンだわ」と言うエホバの証人がいるとすれば大変愚かである。

仮に離婚が認められなかったり、親権を信者側が獲得できたとしても、
ものみの塔の教義がおかしいものだということが認定されていることについては無視するからだ。

逆に、信仰をタテに全面的な正当性を主張する信者の愚かさが裁判で証明されているのと同様、
信仰に関係のない要素には一切触れずに
とにかく妻がエホバの証人であることが全ての元凶なのだとしか考えない非信者の夫がいるとすれば、
それもまた愚かな話だ。

婚姻関係の継続について具体的にどのような努力をしたのか、
信仰の問題以外にも夫婦関係を破綻させる要素がないか
(むしろ妻の側から訴えられてもおかしくないような事由があると非常に不利になる)、

親権を持つにあたって懸念される要素はないか、
そのようなことがしっかり検討された上で判断がなされることを忘れてはいけない。

これまで見てきたとおり、
そのような事由がなければ離婚と親権に関して夫の側の主張がほぼ認められるであろうことは、
十分すぎるほどに判例が証明してくれているのだ。

子どもへのエホバの証人教育は「異常」

さて、エホバの証人の離婚問題についてはいいかげん事例も出揃い、
それほど判断の難しくない事実であるにも関わらず敢えて取り上げた(注)のは、

繰り返し書いたとおり、

「ものみの塔の教義は一般的に見て受け入れがたいものであり、
それに従う信者と婚姻関係を継続させることも、
その教育を子どもに施すことも、一般には耐えがたいものである」ことを

裁判所が十分に認めているということを確認したかったからである。

(注)正直、ここではごくわずかに大雑把にしか触れていないが、この問題を詳しく見ていくとすればそれだけで1テーマ、もしくは1ブログができてしまうほどの情報量がネット上だけでも既に存在する。日本で「離婚」に関して学ぶ必要が生じた場合、エホバの証人に関する事例は既に避けて通れないものになっているほどポピュラーなものだ。

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