イエス・キリストが死ぬと人が救われるのはなぜか(1)

ヨーロッパ文明から読み解くエホバの証人

イエス・キリストが死ぬと人が救われるのはなぜか(1)

何がなんでも人間を処刑したい神様

キリスト教徒であるからには、神の救いを求める。
「救われる」とは、神に赦してもらうということだ。つまり、罰せられない。

何もしないでいると、なぜ罰せられるのか?
人がこれまでに何度も神に背いているからだ。
神は人間をいつでも処分できる。

これはユダヤ教・イスラム教・キリスト教に共通した考え方なのだが、
「原罪」という考え方だけはキリスト教独特のものだ。

原罪とは「神に背かずにはいられない罪」のことであり、人が本来的に持つ性質であるとされる。
そもそも「罪」というのは聖書中においては「神に背く」ということを意味する。

とにかく、人は罪を犯そうと犯すまいと、初めから罰せられることになっている

自己否定から始まるキリスト教という宗教

イエス・キリストはもちろん、バプテストのヨハネなども繰り返し、
人間はすべて悔い改めるべき存在で、悔い改めなければ滅ぼされると言っている。

福音書の至るところにそう書いてあるので、自分なんかが救われるのはとても無理じゃないか、と思えるようにできている。
自分はダメで無価値な人間だと思い込ませる、洗脳の基本的手口が実は福音書全体に散りばめられている

これのどこが「福」なのか、個人的には理解に苦しむ。

罰せられるべき存在だけれども、そのかわりに人間を神の前で価値ある存在と認めてもらうこと、それが「赦し」であり、「救い」である。
神と人との関係において、イエス・キリストの死は人間を救いたいという神のメッセージであるととらえるのだ。

あなたはこの説明で、おわかりだろうか?

はっきり言おう。私は、よくわからない。

神の子としてするべきことをした結果、時の権力者にとっつかまって無惨な処刑をされた悲劇のヒーローだ、
とでも言われたほうがよっぽどわかりやすいのだが、

頼みもしないのに勝手に派手に苦しんで死んでみせたからありがたがるべきだよね?
などという論理を押し付けられても困る。

エホバの証人ではこのあたりを、

アダムという完全な命が犯した罪はその後の不完全な人間の命では贖えず、
イエスという完全な命によって贖われなければならない、

などというわかったようなわからないような論理で説明していたのだが、
これもはっきり言って神の一人相撲、自作自演のようなものであり、勝手にやってくれとしか言いようがない。

もっとも、私の理解ではアダムが罪を犯したのは予定調和のできごとなので、その時点でこの論理も崩れるのだが。

いずれにせよ、イエス・キリストが何者かという、
教義の根幹であり開祖でもある人に関する理解からして後付けの「解釈」で成り立っている宗教だ。

この点では、本文の確定度合いが100%であり最大の教典であるクルアーンを以って、
分裂を一切認めないイスラム教のほうが一神教としての完成度は上であろう。

宗教とは、根拠なしに信じることである

キリストの死後、ヨーロッパにおいてキリスト教というものがある程度確立するまでのキリスト教というものは今日の新宗教よろしく、
その教義も権威も正しさの裏付けも甚だ曖昧極まりないものだったに違いない。

そういう曖昧な教えに関して、
エホバの証人は1世紀当時の「正しい」クリスチャンスタイルが現代に復活したものだ、などと主張されても、
それは即ち自らの正当性自体が曖昧な状態であることを認めているのに他ならない。

この「解釈」というのがエホバの証人問題においていかに重要なキーワードであるかは輸血問題ひとつとってみても、
「世代の解釈」から見てもおわかりだろう。

しかしこれはエホバの証人特有の病気ではない。
キリスト教がその発生当時からもともと持っている問題だ。

結局、宗教とは根拠なしに信じるか、信じないかだ。

キリスト教的に改めて考えてみる

…とはいえ、キリストが死ぬと人が救われる理由については、
一応「聖書」という教典もあることなので、もう少し真面目におさらいしておこう。

ノアの箱舟旧約聖書創世記の神話(3) ノアの箱舟前のページ

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